ウクレレの楽譜を買ったときに、なにやら小さく”Low-Gチューニング”と書かれているのを見たことがありますか?
「なんのことだかわからないし、とりあえずそのまま弾いてみよう!」と練習を始めたのはいいものの、「あれ?なんだろう…なんだか、音がしっくりこない。」
安心してください。誰もが通る道です。
実はこれらの楽譜は、特別な弦を使って、特別なチューニングで弾くようにアレンジされているのです。それこそがまさにLow-G(ロー ジー)チューニング。
この記事ではそんなLow-Gチューニングのイロハを解説していきます。
Low-Gチューニングってなに?通常のチューニングとの違いは?
Low-Gチューニングとは、読んで字のごとく 低い(Low)4弦(G)を意味します。
ウクレレの通常のチューニングでは、上の図の左側のように4弦(G-ソ)が3弦(C-ド)よりも高くなっていますよね。この4弦を特別な太い弦に張り変えて、3弦より低い、1オクターブ下のGまで低くするのがLow-G(ロウ ジー)チューニングです。
これに対して通常のチューニングは「High-G(ハイ ジー)チューニング」と呼ばれたりもします。
Low-Gのなにがいいの?
Low-Gチューニングにすることのメリットは、低い音が加わることでウクレレの音に厚みが増すことです。
さらに、ソロ演奏で指弾き(アルペジオ)をするときなど、親指で低音を鳴らすことができるので、演奏のアレンジの幅が広がります。
また、High-G(通常)チューニングでは、4つの弦のうち比較的高い音(4弦・1弦)に低い音(2弦・3弦)が挟まれていますよね。実はこれがウクレレの軽快なサウンドを特徴づけているポイントのひとつでもあります。
これをLow-Gチューニングにすると、1弦から4弦まで順に音が低くなります。どちらかというとギターに近い弾き方になるといえるでしょう。
- 低音が加わり、音に厚みが増す
- アレンジの幅が増える
- ギター経験者は馴染みやすい
ちなみに、4弦が1オクターブ音が低いとは言っても、元は同じGの音程です。Low-Gチューニングでなければ弾けない曲、というのはめったにありません。
ですが、「低音が多いからこそ、このアレンジは魅力的に聴こえるんだ!」と思えるアレンジや楽譜を発見したときには、Low-Gにチャレンジするチャンスではないでしょうか。
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Low-Gチューニングの手順
ソロウクレレを極めるのなら、ぜひとも挑戦してみたいLow-Gチューニング。
しかしながら、ただ4弦を緩めて低くすれば良い、というわけではありません。
大まかな手順は下記の通りです。
- Low-G専用弦を手に入れる
- Low-G専用にするウクレレを決める
- 弦を張り替える
- 4弦をGの音に合わせる(3弦の音より低くなるように)
- 弦がサドルやネックにきちんとフィットし、きれいな音が出るか確認する
- 弦がフィットしなかったり、音が良くない場合は楽器店に加工を依頼する
Low-Gチューニングの注意点
上の手順からすでにわかりますが、Low-Gチューニングにはいくつかの注意点があります。
ひとつずつ見ていきましょう。
弦はLow-G専用弦を使う
冒頭から述べているように、Low-Gチューニングでは、4弦に特別な弦を使います。
というのも、ほとんどのウクレレは購入時、4弦に巻かれているのはHigh-G用の細い弦です。これをそのままペグを回して、1オクターブ音程を下げても、弦が細すぎてブヨブヨの気持ち悪い音になってしまうのです。
ウクレレの弦は、太くなればなるほど、音が低くなっていきます。通常のチューニングでも、弦によって太さが違うのはお気づきでしたか?
Low-Gチューニングには、下記の写真のように少し太めのLow-G専用弦を購入しましょう。
画像 写真 サドル ナット
おすすめのLow-G専用弦
ちなみにおススメのLow-G専用弦は下記の記事で紹介しています。
どの製品も1~4弦のセットになっています。各弦の音質のバランスをとるためにも、4弦だけではなくすべての弦を交換してしまうほうが良いでしょう。
Low-G専用のウクレレを用意する
Low-Gチューニングにするには、弦を交換しなければならないことはわかりました。
まさか曲ごとに弦を張り替えようなんて猛者はいないと思いますが、やはり、いちどLow-Gにすると決めたウクレレはLow-G専用にしたほうがよいでしょう。後ほど説明しますが、場合によってはウクレレの加工が必要になることもあるからです。
あるいは、Low-G専用としてコンサートウクレレや、ロングネックタイプを新たに用意する、というのも手です。
というのも、一般的なソプラノウクレレでLow-Gチューニングにしたとき、稀にですが美しい音が出ないことがあります。
Low-Gチューニングで使われる太い弦は、他の弦に比べて少しだけ強い張力を必要とします。しかしソプラノウクレレの場合、ネックの長さが短いので、弦をあまり強く張ることができません。そのため、ウクレレの機種によっては4弦の音がブレたような弾き心地になることがあるのです。
ソプラノウクレレでも、ロングネックタイプ (ネックが長く、フレット数が多いもの)や、ひとまわりサイズの大きいコンサートウクレレのほうが、どちらかというと相性が良いのは確かです。
そもそも、Low-Gチューニングはソロ演奏のアレンジの幅を広げるためのものでしたよね。
これを機に、より音圧が大きくソロに向いているコンサートタイプや、弾ける音階の数が多いロングネックタイプを手に入れることで、理想に近い演奏ができるかもしれません。
もちろん、ソプラノタイプであっても、Low-Gでまったく問題なく弾けるものもあるので、一度お手持ちのソプラノウクレレで弦だけ交換してみて、良い音が出なければ新しいウクレレを検討してみるのも手です。
ナットやサドルの加工が必要な場合がある
本来ウクレレの構造は、High-Gチューニングで演奏するように作られています。
したがって、弦に直接ふれるナットやサドルの溝の幅がHigh-G用の細い弦に合わせて作られていて、Low-G用の太い弦に合わないことがあるのです。(これもウクレレによります。)
画像 写真 サドル ナット
このような場合は、小さなヤスリなどで削って、溝を広げてあげる必要があります。
ただしこれには非常に精密な作業が求められるので、初心者が自分でやるのは正直おすすめできません。
ウクレレを販売している楽器店であれば、2000円程度(弦の費用は除く)で加工してくれるので、プロにまかせておいたほうが安心でしょう。
最後に
ここまで読んでみて、もしかしたら「初心者にはちょっとハードルが高いな・・・」と思われましたか?
確かに、普通のチューニングのように一筋縄ではいきませんが、かといって決して難しいものでもありません。
それに、Low-Gチューニングができれば、弾ける曲のレパートリーが段違いに増えるのもまた事実です。
初心者を卒業する1ステップとして、ぜひとも挑戦してみてはいかがでしょうか。
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